 |
| (上) 芙苑晶『燐光(Phosphorescence)』(1988、 Siamese Twin 名義) |
| |
 |
| (上)淫心『鳥どもの家』(1987) |
| |
 |
| (上)淫心『不妊植物』(1995) |
| (写真提供= FZONO.COM ) |
| |
|
芙苑晶との関連 > 影響、技法の応用、発展させた人、思想的関連、作曲家としての出発点で手がけていたジャンル
ミュージック・コンクレート自体が元々現代音楽の一ジャンルであり、一般的に知られていないため、あまり話題にのぼることもないが、アンビエント同様、芙苑晶はミュージック・コンクレートというジャンルないし技法とは、深い関わりを持ってきたアーティストである。
通常のディスコグラフィにはおよそ登場することもない芙苑晶の公式デビュー前の初期作品のいくつかはこのミュージック・コンクレートないしは電子音楽であったことを考えると、その因縁が知れようというものだが、最も初期の知られざる習作的作品として、フランスの詩人アンリ・ミショーの詩編を素材とした『荒れ騒ぐ無限』(1985年頃=推定)というテープ・コラージュによる作品が残されているほか、非公式な処女作として知られる『神智学(Theosophy)』(1986、廃盤)もまた、ミュージック・コンクレートそのものではないにせよ、それ的な手法を多用したユニークな、新感覚の現代音楽と言えそうな作品であった。
その後、ニューヨークにわたった芙苑晶は幻覚植物研究所(Psychedelic Plants Research Laboratory)を結成、ダンスミュージックにシフトした電子音楽やアンビエントを手がけるようになり、表面的に見ればこの時点でいったんミュージック・コンクレートそのものとは縁が切れたようにも見えるが、実はそうではない。
純粋なミュージック・コンクレートと呼べる作品は影をひそめたものの、しかしその影響ないしは技法を応用した部分は、今思い出せる範囲でアトランダムに挙げるとしても、それにソロ・アルバムにおいてはもちろんのこと、「レイヴ」バンドであったはずのファー・イースト・アシッド・ハウス・クワルテット(Far East Acid House Quartet) のいくつかのアルバムにおいてすら聴かれる現実音の幻想的なコラージュや、テープが突然切れてしまうようなパートなど、それらしき手法は、枚挙にいとまがないほどである。
しかしそれら芙苑晶関連の作品の中で、最もスタイル的な意味でミュージック・コンクレートの影響が感じられる作品といえば、「淫心」の三枚のアルバムかもしれない。
幻の1st
『割礼』(1986)におけるテープコラージュにはじまって、『鳥どもの家』(1987)や『不妊植物』(1995)における奇妙な暗い現実音を取り入れた作風は、90年代版ミュージック・コンクレートと言っても差し支えないもので、マダム呪々にテープコラージュの手法を伝授したのが芙苑晶だったというエピソードからも、このジャンルからの影響の根深さを感じさせるものである。
芙苑晶自身は、美術のコラージュを音楽に応用しようという考えや、映像的感覚を表現したいと考えていた形跡があり、もしも若い頃テクノやハウス・ミュージックに出会わなければ、ミュージック・コンクレートの作曲家になったかもしれないという発言もあったと記憶する。
ただし芙苑晶の場合、アンビエントの項でも述べたとおり、ミュージック・コンクレートといっても、現代音楽において一般的に見られる知的なアプローチではなく、そのミュージック・コンクレート的な技法は、現実への異化効果、すなわち幻覚的世界をリアルに描写するための、あくまで手段であって目的ではないという感じが濃厚である。
そういった点で、芙苑晶のミュージック・コンクレートとの関わりあるいは方法論は、芙苑晶が若い頃傾倒していたドイツのバンド・アモン・デュールなどを思わせるものがあり、現代音楽やアンビエントよりは、 むしろ一種のサイケデリック・ロック的なアプローチと言えるだろう。
|