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芙苑晶 ディスクレビュー > 芙苑晶ソロアルバム > 年代記
年代記
( Chronicle )
 ( 2003 )
ジャケット タイトル
(英語タイトル=原題)
発表年 レーベル メディア ネイション
芙苑晶 年代記 AQi Fzono Chronicle 年代記
( Chronicle )
2003 Lavalamp CD / MD USA
関連ジャンル

スペース・ロック、クラシック、プログレッシブ・ロック、
アンビエント、エレクトロニカ、インダストリアル、IDM、電子音楽

サウンド

それまでの電子楽器を主体としたサウンドから一転、合唱オーケストラ東洋の民族楽器をフィーチャーしたネオ・クラシカルでダイナミックなサウンドである。

シンセやサンプラーももちろん使われてはいるが、『宇宙論』以前の作品と比べるとその「アンサンブル」の一部といったイメージになり、メインのアンサンブルはオーケストラや合唱、歌姫ジャニス・ブラッドレイの流麗なソプラノ、グレゴリオ聖歌のアンサンブルなども目立つ。

しかし曲の随所にインダストリアル風のループ電子音ノイズテープ・コラージュが使われ、芙苑晶ならではの「映像的な」サウンドに貢献している。また、レクイエム風な合唱の響きが印象に残る。

サウンド、ストーリー性ともに、これまでの作品の中では最高度に超弩級の壮大さである

ミュージシャン:
芙苑晶

シンセサイザー、キーボード:
ARP、Moog、YAMAHA CS-80等のアナログ・シンセサイザー、他にメロトロン、Fairlight CMI(サンプラー)、AKAI S6000、パイプ・オルガン、 ピアノ、スピネット等を演奏。

指揮: Fzono Symphonic Ensembleを自ら指揮

ミュージシャン:
ゲスト
Fzono Symphonic Ensemble: オーケストラ、合唱、民族楽器
マダム呪々: ギター
Janis Bradley: ソプラノ
テーマ 天地創造から近未来に至る「人類創生以来の歴史」を音で描くというテーマで、ミレニアムを記念して創られた壮大なスケールの交響詩
関連項目/文化現象
  • ミレニアム

  • 人類の歴史

  • シンフォニック・ロック

  • シンフォニック・テクノ

  • プログレッシブ・ロック

  • インダストリアル、ノイズ・ミュージック

  • IDM

  • 電子音楽、ミュージック・コンクレート

  • アンビエント

  • サイケデリック

  • グレゴリオ聖歌

  • クラシック(交響曲)

エピソード 芙苑晶の新境地を切り拓いた異色の大作で、発売当初はファンの間でも賛否両論が分かれた作品。しかしそのことがまた、さらに音楽ジャンルと国境を越えた熱烈な支持者を生み出し、海外の音楽レビューサイトでも大絶賛を浴び国際的評価をも決定付けた作品となった。

また、1998年『宇宙論(Cosmology)』のリリース後、引退を表明した芙苑晶の
復帰第一作ともなった
音源/入手可能度 現行品
現行品CD 日本での販売:
Amazon.co.jp > 芙苑晶

Amazon.co.jp > 芙苑晶 > 『年代記(Chronicle)』

海外 >
Amazon,com(米国)『年代記(Chronicle)』ページ
CD Baby 『年代記(Chronicle)』ページ

試聴可能サイト

日本 >
Music Term
『年代記(Chronicle)』のページ


アメリカ >
> CD Baby [ mp3 試聴可能 ]

[アメリカの販売サイトですが、mp3 試聴可能。
ページ左側のトラック・リストの曲名をクリックすると、再生されます]

シングルカット、
リミックス
Chronicle 3」 > FM放送局のプロモ用に制作されたデモ・シングルあり(2004年・日本/アメリカ、非売品)

Chronicle 2 」 > リミックス >
"Chronicle2 - Enigmatic Symphobient Dance Mix" 
(リミキサー: トランス・レイヴ・ドーターズ)
恍惚的宇宙論/トランス・レイヴ・コスモロジー
( Trance-Rave Cosmology )


Chronicle 3」 > リミックス >
(リミキサー: トランス・レイヴ・ドーターズ)
恍惚的宇宙論/トランス・レイヴ・コスモロジー
( Trance-Rave Cosmology )
アルバム制作と発表までの経緯
 
前作『宇宙論(Cosmology)』(1998)レコーディング中の97年から以後数年間、芙苑晶は様々な変化に見舞われている。『宇宙論』レコーディング中の97年、田嶋エリサの死により「ファー・イースト・アシッド・ハウス・クワルテット」が自然消滅の形で解散。これに絡んで彼と「ファー・イースト」のメンバー、スペースDJリョウはバンド最後のアルバム『電気羽虫』ならびにリョウが勝手にリリースした『電極世界(Electrode Land)』のレコーディング・トラックの解釈とその版権をめぐり、見解の違いにより仲違いを起こしている。

そして98年。『宇宙論(Cosmology)』発表後、芙苑晶自身がアメリカのファンジンで引退を表明。数ヵ月後、日本にもその情報が伝えられ、盛り上がりを見せていた日本のファンは騒然となった。
さらに『宇宙論入門』発表まもない2000年(?)頃、彼が契約していたニューヨークの Nerve Nets Records の閉鎖によって、すべての音源が一時まったく流通しない状態になり、当時『宇宙論』に続く新作としてすでにアナウンスされ、ファンの期待を集めていた2枚組の超大作(当時発表された仮題は『楽園』)は、すでにオーケストラや合唱を導入して半分以上がレコーディングされながらもオクラ入りになってしまっている。

 同じ頃、芙苑晶・失踪の噂が日本にも流れ、当時のファンクラブ会報誌上にも取り上げられ、不気味な噂が飛び交ったのもこの頃である(実際にはこの時期彼は、一時的に音楽をやめ、リタイア生活に入っていた)。

 しかし、2003年、芙苑晶はこの『年代記(Chronicle)』を引っさげてシーンに復帰。それだけでも嬉しかったものだが、作品がまた凄かったのだ。前作から六年も待たされただけのことはあり、内容に対する個々人の好みを別とすれば、期待を裏切らない---というよりは、一聴して仰天するような壮大でドラマティックな内容に仕上がっている(つまり、ファンにすればダブルショックだったわけである)。
 
ディスクレビュー
音による壮大な映像ドラマ!! 超弩級のスケールで描かれる「21世紀のシンフォニー」
これは凄い!!」 「こんな音楽は聴いたことない!!」--- このアルバムを聴いた誰もが最初に言う感想がこれだ。
どこが凄いと言って、まず、構想である。" 天地創造から近未来に至る人類の歴史"を描くというテーマで、ミレニアムを記念して創られた壮大なスケールの交響詩と言える超大作で、文字通りドラマティックな曲構成と凝りに凝ったアレンジと、全8楽章・75分ノンストップは鬼気迫る大迫力
サウンドのスケールの壮大さでは、あの名盤『宇宙論(Cosmology)』をも凌ぐ。 「ドラマティックで感動的、音楽と言うより映画を観るよう」こんな感想を述べたファンも多かった。世界の評論家ですら、うまく言い表せなかった超弩級の大作である。

いずれにせよ、これほどの壮大なスケールと完成度で創作されたアルバムはポピュラーはおろか、クラシックの世界にもほとんど見あたらないほどで、比較すべき対象が見あたらないというのがほんとうのところだと思う。

 『宇宙論(Cosmology)』以前の電子楽器やコンピューターを主体としたサウンドから一転、オーケストラ、大合唱、民族楽器をフィーチャーしたネオ・クラシカルでダイナミックなサウンドで、時としてレクイエムを思わせる深く荘厳な響きがまず印象的だ。

  だが、それだけではない。曲の随所に挟みこまれる多種多様なサウンドが効果的にドラマを盛り上げている。芙苑晶の演奏するシンセサイザーパイプ・オルガンピアノ、 さらにサンプラーを駆使したインダストリアル・サウンドノイズ・ループ宇宙的なイメージの電子音テープ・コラージュと思われる幻覚のようなサウンド異様なギターの逆回転音、動物の声嵐や風や雨の音・・・etc.etc..
 これだけの多種多様な音の要素を一つのアルバムの中に入れると、アレンジ自体が破綻してしまうものだが、芙苑晶ならではの緻密かつ大胆に構成されたアレンジによって、それらの諸要素が不思議に溶け合っているのは、ほとんど神わざとしか言いようがない。サウンド面だけを取っても、従来の芙苑晶の作品にはない、新しいタイプのアルバムとなった。

  このように、 メインとなる楽器編成はいつになくアコースティックで、その点では『宇宙論(Cosmology)』以前の芙苑晶作品と一見対照的だが、それらが見事に「映画」のようなストーリーを創り上げているのは、芙苑晶のこれまでのアルバムと同じパターンと言える。が、今回はこれまでとはテーマもスケールがケタ違いに違う。ハマって聴いた時のトリップ感はそれ以上かもしれない。
 
 そういうタイプの作品だけに、全部聴くにはそれなりの覚悟がいるが、ハマって聴けばそれだけ充足感も非常に高いできればぶっ続けでフル・ヴォリュームで「ハマって」聴いて欲しい出来れば、いいオーディオ・セットで聴くことをお勧めする。トリップ感は最高になるだろう)。芙苑晶のアルバムはだいたいそうだが、『年代記』ではその傾向が最高潮に達している。

 芙苑晶のアルバムの中では「異色の大作」とも言われ、人によって評価(ないしは好き嫌い)がかなり分かれてきた。発売当初から現在(2007年11月)に至るまで、いまだ賛否両論が依然かまびすしく、オーケストラを使用したことから、当初はダンス系のファンには否定派もいた。しかし反対に、芙苑晶の最高傑作、『宇宙論(Cosmology)』を超える作品だと言う人もいるし、最近ではテクノ系のリスナーにも傑作だという人も増えてきていて、国内でも、発売後時間が経つほど評価が上がってきているように見える。

 何はともあれ、これだけの巨大なプロジェクトをたった一人のソロ・アーティストがよく仕上げたものだ、という感想は、万人に共通のものだろう。個人的好みはさておき、まずそれだけで評価されるべき力作だ。

 音楽的完成度もある意味で最高と言える。芙苑晶自身「100年、200年残っていくものを作りたいと思って書いた」作品だと語っており、全体的な構造は、本物のクラシックのシンフォニーに限りなく近づいた、早くも「大家」的な風格を感じさせる完成度の高いアルバムとなっている。

  とくに このアルバムは、アメリカ・リリースであったせいもあり、日本よりも欧米諸国での評価がまず先に起きたのも印象的だった。
  海外レビューではレビュアーたちがこぞって絶賛し、ヴァンゲリスの『Mythodea』やアミン・バティアの『The Intersteller Suite』等、スペース・ミュージック/シンフォニックの名盤と比較されたうえ、「私は芙苑晶のほうがヴァンゲリスより上であると思う」とまで述べる著名レビュアーや評論家たちもいたほか、ワグナーやカール・オルフストラヴィンスキー等々クラシックの大作曲家の作品を引き合いに出して「これぞ21世紀のシンフォニー」といった評まであり、それまでの「Japanese Vangelis」的な(日本のファンにとってはちょっと歯がゆいような)評語から「世界の FZONO」(この言い方が僕は個人的には好きでないが)へと躍進した、すなわち商業的成功云々以前にすでに、作曲家・芙苑晶としての評価を国際的に一気に高め、シンセサイザー・シンフォニーの世界第一人者としての知名度を広めた、記念すべき作品となった。

 そういう内容のため、はっきり言って「イケイケのダンス・ミュージックしか聴きません」というファンにはあまりお勧めできないが、『宇宙論(Cosmology)以上の壮絶な大作が聴きたいというリスナー、天才の仕事が見たい人たち、そして美しいメロディや壮大な世界にトリップしたいというリスナーには是非お勧めの野心的超大作だ。
 
(天野弘樹)  
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